ガチッ!



「「〜〜〜っ…」」

二人で口を押さえて、同時に顔をあげる。

「…痛い」

「うん」

「ヘンな味がする」

「鉄…の味?」

「うん」

そう呟いてから同時に床に置いてあった雑誌を指差した。

「「この本に書いてあるのは嘘!」」

本の見出しに書いてあったのは確か…『ファーストキスはレモンの味』











「…子供だったね」

「そうだな」

微笑むアスランを見て、軽く背伸びをして目を閉じると、当たり前のようにアスランの唇が下りてくる。
ちゅっ という軽い音が誰もいない通路に響き、すぐに目を開ける。

「勢いの問題だったのかな?」

「気持ちの問題もあったんだろうな」

「気持ち?」

「あぁ」

手に持っていた書類をあたしに預けると、空いた両手であたしの腰を背後から抱き寄せた。

「あの頃はまだ好き、という想いより好奇心の方が大きかったろ?」

「…そう、だね」

「気持ちがなければ、キスは痛いだけだよ」

後ろから頬にキスされて、それがくすぐったくて首をすくめる。

「そっか」

「でも今考えるとが相談してくれたのが俺で良かったよ」

「何が?」

「いくら柑橘系が好きだからって、ファーストキスをキラとしてたら…と思うとちょっと、ね」

「複雑?」

「…今更、と思うかもしれないけど嫉妬する」

真顔でそう言い切ったアスランを見て、やっぱりアスランが好きだ…そう思った。

「アスランの前にキラに相談してた、って言ったらどうする?」

「本当か!?」

「…しよう、と思ったのは本当。でもね…アスランがいいって思ったんだ」

「え?」

「どんな事でも、初めての事をするのはアスランとがいい…昔からそう思ってた」

…」

首を後ろに倒してアスランの肩に頭を乗せる。

「ね、あの時みたいなキス…しようか?」

「無茶言うな」

額に軽いキスをしてから、アスランがあたしの手から書類を抜き取って歩き出した。

相手にそんなキス、もう出来ないよ」

「えーっ!」

「…愛してるからね」

微笑みながらそんな口説き文句を呟いて、大好きなアスランはそのままカガリの執務室に向けて歩き出した。

「…今度不意打ちでキスしてやろうかな」

そんな不穏な事を考えながらもキサカの元へ戻るあたしの足取りは軽い。
幼い頃味わった最初で最後の痛いキス、この先何があっても…心を許すのは彼以外いない。





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書いたのは種運命の時だから、もうすげぇ昔…タイトル無しで埋まってたのでサルベージ。
愛があるから、幼い頃のような勢いある好奇心を満たすようなキスは出来ないよって話です。
2010/09/28